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ある祭りのための物語

今日は、大切なお祭りの日。

竜が空を駆け巡り、虎は海の上で吠えていた。

ふたりの神様も地上に降りて、この日のために仕上げてきたポーズを決めて競い合っていた。

応援団はチームに分かれて、その勝敗を盛り上げた。

ずっと、こうだったらいいのに。

だって最後の夜はこんなに切ないんだから。このまま僕だけが夜に溶けて、消えてなくなっていってしまいそうだった。

空を見上げると、星はちかちかと歌い、月はふわふわと踊っていた。

早くしないと、クライマックスに間に合わない。僕は歩みを速めた。

すでにみんなが自分のお気に入りの場所を見つけて座っていた。

花火に似た流星たちが、光っては消えていった。

ついにクライマックス。

大きなクジラのような流星たちの群れが、この空を覆った。

流星たちは緑色やオレンジ色に光を変化させ、ぱらぱらと音を立て、その尾を飛散させて消えていく。

みんなそれを見上げていた。

夜はやっと光になれたのだと思った。

あのライオンは、星になれたのでしょうか。

あの犬は、いつかの夜になれたのでしょうか。

あの夢は、消えた後もなにかに生まれ変われたのでしょうか。

あの竜は、ひとつになれたのでしょうか。

光の群れが通りすぎたあと、いつもの空が広がっていた。

すでに夜明けの光が雲を撫でていた。

夕焼けに似た、祈りのような光だった。

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