夕焼け犬はふるふると震えていた。
夕焼けに照らされたその黄金に輝く毛並みは、深い夜星たちに照らされた獅子のたてがみを思い起こさせた。
その震えはこれから何かが起こることへの確かな予感と、そしてそれが不可逆な現象であることは、私にも簡単に想像ができた。
彼の背中はすでに羽化する瞬間、羽虫のように盛り上がり、中の光が透けてみえた。
すでに猫たちは、せかすように彼の後ろを飛び跳ねながらついてきていた。
私は彼の頭にそっと手を置く。
燃えるように輝くその体毛に、深く埋まっていく。
子どものころ、夕方まで遊び疲れてしまった私が、思わず手をついた野原の温度のようだった。
私は少しだけ唇を噛んだ。
「大丈夫。怖くないよ。」
ついに、最後の時が始まる。
彼の背中がパクっと割れた。歓声にも慟哭にも、歌にも似た音を発しながら、くるくると巻いた「夜」が現れた。夜は彼の翼のように左右に、そして星を求めるように空へと広がっていく。
それは限りない未来への畏怖と、限りない過去へのあこがれを感じさせた。
最初、頼りない透明な生物のような色だった夜は、次第に色を濃くし、限りなく漆黒に近い青色に変わっていく。
私は彼の頭に手を置いたまま、話をする。
彼の耳は私が声を発するたびにぴたぴたと跳ね、丸まった尻尾を小さく振った。
我慢していた涙がついに零れ落ちる。
その涙は夜に吸収され、小さく分解された。
きらきらと光りながら散っていくそれを、祈りのようだと思った。