隣の奴が言った。
「ついにだ。ついに。僕らの番だよ。」
もうしばらく喋ることも忘れていた私は、それが私に向けられた言葉でないことがわかるとまた目を閉じた。
「待ちに待った日だ。こんな暗いところとはおさらばさ。」
彼の言う通り、ここは本当に暗かった。
あまりの暗さに、私は自分の体や声すらもなくなったように思えたし、
ここはどこなのか最後に考えた日も忘れてしまった。
そしてここにいることの目的も、私は誰なのかすら思い出せなかった。
そんなことを夢うつつに思っていると、さきほどの隣人だろうか。悲鳴ともに似つかない、羽虫が目指すべき光源を見つけたような声で、あっと鳴いた。
同時に、世界が光った。あまりの眩しさに私はきつく目を閉じた。
その光は私が星だったことを思い出させた。
瞼が熱いのがわかる。
ここは、星たちが最後に行き着く場所。
私は、誰かの星だった。
気づけば、私は光るか細い手の中にいた。巣から落ちた雛鳥を慰めるような、慈愛に満ちた手だった。
そっとその手が引き戻され、光の主の顔が見えた。
彼はふうっと私に息を吹きかける。
その瞬間、私は自分が誰の星だったか思い出すことができた。
共に歩んできた時間も、その時の空気の匂いも。
私は自分の体が徐々に消えていくのがわかった。
私はあの時、確かに居たんだよ。
あの子は、元気かな。
どうか新しい星を、見つけていますように。